「御剣検事、本当に有難う御座います。」
「いや、君が頑張ったからだよ。」
「そんな、私だけじゃとても…」
司法試験合格の通知を握り締める。
そんな彼女の姿を見て微笑んでいる彼。
「謙遜する必要はないよ。君が頑張ったのは私が一番知っている。」
そう、だれよりも。
彼女が司法試験を受けると知った時から、敵で弁護士である成歩道のもとで働いている彼女に会いに行き。
試験勉強を教えるという口実で、休日に二人きりであったりもした。
彼女が目指すのは弁護しか、それとも検事かわからなかったが、彼女が頑張っているのには代わりがなく。
それを一番近くで見れることが何よりも嬉しかった。
「あ、あの。」
見れば彼女は俯いて、頬を赤く染めている。
「なんだ。」
「私、好きです。御剣検事のことが好きです。」
突然の告白。
頭の中が真っ白になる。なにも考えられない。
どんな状況下の法廷でもありえないことなのに、彼女は意図も簡単に私を不能にさせる。
そうして、やっとで出来た言葉は。
「君の年の子から見ると、年上がよく見えるらしい。」
って、違う。そうじゃなくって。
「・・・・・。」
サッと瞳を曇らす。
違う、こんなことが言いたいのではなくて。
「だから、夕実君のそれもただの憧れだよ。」
違う。私も彼女のことが好きで、でも・・・。
心配だった。私と彼女の間は開きすぎていて。
どんなに近づいても、歳だけはどうしようもなくて。
「そう、ですね。」
「あぁ。」
「そうかもしれません。ごめんなさい。急に変なことを…」
彼女はしょんぼりと肩を落とす。
「御剣検事!ここまででいいです。」
渋滞、赤信号で当分動きそうにないこの車の中で彼女は言った。
「しかし、駅はまだ」
「いいです。少し、歩きたいんです。」
「・・・そうか。」
「はい。今日は本当に有難う御座いました。」
「あぁ。」
「おやすみなさい。」
車を降りた彼女は、丁寧にお辞儀をして私の視界から消えた。
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